令和5年藤枝市議会定例会2月定例月議会
令和5年2月28日 (代表質問)
石井通春 (日本共産党)
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(1) 会計年度任用職員の雇用の安定と処遇の改善
(2) 市が目指す「こども家庭センター」とは何か
(3) 5類化で縮む対策、市民の命を守る施策を
標題1:会計年度任用職員の雇用の安定と処遇の改善
住民の生活を支える自治体の業務は、任期の定めのない正規の常勤職員によって自治体が直接執行すべきであり、確定申告など業務の繁忙期など正規職員だけで対応できない時のみ、非正規職員を採用してきた。
公務員の身分保障原理は憲法の要請によるものであり、「公務員を選定し、及びこれを罷免する事は国民固有の権利」(15条1項)これは、権力が行うものではないことを意味し、さらに「すべて公務員は全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」(15条2項)とある。
つまり、国民の権利保障のために勤務することが求められる以上、永続的職業公務員を持つ事と位置づけられている。
ところが、80年代に始まった新自由主義路線、その後の小泉政権による「小さな政府」方針など、官から民への掛け声のもと、地方公務員の定数削減が進み、更に正規職員が担うべき任務を非正規職員が行う事態も進み、新たな行政需要に対して正規職員を配置するのではなく、初めから非正規職員を配置する例(消費生活相談員や放課後児童支援員など)も数多く発生するに至った。
そこで、問題の根本を解決することなく「期末手当」を支給するという「目玉」をアピールし、2020年4月、戦後一貫した「常勤職員が基本」の公務員制度の変質を固定化する会計年度職員制度がスタートした。
だが、非正規職員の処遇改善を趣旨として制度化しておきながら、会計年度任用職員制度の実態は、改善どころか悪化している。
1:まず本市の実態から確認します。
現在の会計年度任用職員数(フルタイム、及び、パートタイム)。応募用紙から確認できるだけでも41種の職種があるが、とりわけ専門性が求められる看護師、保健師、保育士、図書館司書、就労支援員、消費生活相談員、介護認定調査員の人数。
2:会計年度任用職員制度は、「官製ワーキングプア」と「ジェンダー差別」を生み出す役割を果たしているのではないか。職員に占める女性の割合、勤続5年以上の職員数、そのうち年収250万円以下の数はどうなっているか。
3:安定した雇用とならない最大の原因は任期付きの雇用になっている事に尽きる。現在、何年毎の公募を行っているか。非公募の任用の上限回数を設けているか。自治体業務の専門性、継続性を担保するには、公募によらない再度の任用を制限しない制度が必要ではないか。
その際、本人希望を前提に、公募によらず勤務実績による能力実証で行う事や、一定期間継続して任用してきた場合には、民間同様、任期の定めのない職員として位置づけ常勤職員採用への道を開く事がもとめられるのではないか。
4:正規職員との仕事の棲み分けはどれだけ行われいるか。学童保育、学校図書司書など、正規職員の指示を受ける事のない職種はいくつあるか。また、会計年度職員が行う仕事のうち正規職員を補助する仕事として位置づけている根拠は何か。
5:制度の目玉である「期末手当」の実施と引き換えに、月例給を下げた事はあるか。一方で、支給不可としていた「勤勉手当」を支給する方向が示されたが、その水準は正規職員同等にすべきではないか。
6:安心して、ずっと働き続けられ、いい仕事ができるようにするには、休暇制度、福利厚生や共済制度の常勤職員との均等待遇を図る事や、生理休暇や病気休暇について、無給となっている実態の改善、また、会計年度職員内においても、パートタイムには退職手当がないなど、パートタイムも「賃金」ではなく「給料」扱いにする事などが必要ではないか。
標題2:市が目指す「こども家庭センター」とは何か
来年度予算の目玉の一つに、「こども家庭センター」の開設が挙げられている。従来の児童課を「こども課」に改編し「保育統括担当参事」を配置し、児童福祉と母子保健を一元化、妊産婦から子育てまでこどもを中心に包括的に支援する体制を構築とある。
施政方針では、今春「こども家庭庁」の新設により、市はこれまで国が実現できなかった教育と子ども政策の一元化を先駆けて進めてきた、今回はこれをさらに進めるための体制強化だと言い、妊産婦から子育て家庭など支援をするためにセンターを設け、子どもの尊厳を守り、健やかな成長を支える独自の「こども基本条例」の制定を目指すとしている。
こども家庭庁設置法、こども基本法案の国会審議においては、以下の点が大きな問題として残ったまま可決されている。法に基づく市の組織改編がどういう方向性になっているのか。確認をしたい。
1:まず、現在行っている市の業務の中で、組織を改編しなければ実施が出来ない業務が具体的に何なのか。また、改編する事で従来よりスムーズに進む業務は具体的に何なのか。
2:こども家庭庁設置法の問題点
日本の子どもが置かれている状況、7人に1人が貧困、1人親世帯の半分が貧困、虐待の相談件数が年間20万件、小中学校の不登校20万件、いじめの認知件数51万件、19歳以下の自殺800人以上など、精神的幸福度が先進38国中37位というものである。しかしながら、法は政府が97年に批准した「子どもの権利条約」(生命生存および発達に関する権利、子どもの最善の利益、子どもの意見表明尊重、差別の禁止の4原則)の理念がないまま可決された。今後定めるとしている条例等で、この理念を活かすものであるか。
3:今後、市は、子どもの尊厳を守る条例を作るとあるが、権利条約の4原則のうち、もっとも不可欠なのは、「子どもコミッショナー」(行政から独立した立場で行政を評価するとともに、権利主体者であるが自己決定権を持たない子どもが自由に意見を表明して反映される権利を保障する仕組み)の設置である。条例等で、この理念を活かすものであるか。
4:子ども基本法(閣法と相まって子どもに関するとりくみの共通基盤とされている)には、大きな問題点がある。
ひとつは、「子どもの養育は家庭が基本」と明記した事。このフレーズは、歴代自民党政権が、児童扶養手当や生活保護の改悪など子育て支援の後退を合理化する理由として強調してきたものである。この規定は、子どもと保護者に更なる自助努力を強いる事は明らかである。
二つ目は、権利条約4原則と学校教育を別物とし、学力テストの導入など過度な競争管理教育、教育への国家介入、愛国心の押しつけなどが行われている事に4原則が影響を及ぼさないようにした事で、子どもの権利侵害を放置した事。
三つ目は、子どものデータ連携の推進を盛り込み、生誕時からの個人情報を集積し、自治体内での情報連携として他の自治体へ横展開するとした事である。本人が拒否できないまま、不利益な利用がされる歯止めがなく個人情報を財界の儲けの種として利活用しようとしている。
いずれも大きな問題点だと考えるが、市はどう認識し、今後の組織改編、条例制定でこの問題に対してどう取り組んでいくのか。
標題3:5類化で縮む対策、市民の命を守る施策を
岸田政権は、連休明けに新型コロナウイルスの感染症法における位置づけを2類以上の対応から季節性インフルと同等の5類へ引き下げるとした。これにより行政の役割が大幅に後退することになる。
新型コロナの感染力は季節性インフルよりもはるかに高く、後遺症の重さや死者の多さも際立っている。ほぼ冬季のみに現れる季節性インフルに対し、2022年以降季節を問わず3度も感染拡大の大波を記録、BA5よりはるかに強力な新系統のオミクロン株の感染も確認されるなど、さらなる拡大も危惧される。
世界の中でも最悪の状況になりつつある最大の原因は、オリンピック強行開催、GOTOトラベルなど感染拡大に手を貸したり、医学的根拠もほとんどないまま規制緩和を繰り返したり、公立病院をさらに縮減する方針を堅持するなど、国の無為無策にある。
一方で、PCR検査や補償制度、ワクチンなど、地方自治体の独自の取組がクローズアップされるなどの側面もあり、本市も感染初期時には、ドライブスルー式の検査、持続化給付金の手続き相談窓口、高齢者施設への無症状PCR検査、中小企業への給付金制度など、独自策を講じている。
しかしながら、予算案及び施政方針では、ワクチンの対策、コロナ以外の予防接種などに触れられているが、5類化を機に変わるコロナ対策(病床確保料診療報酬加算の段階的廃止、医療費の公費負担の段階的廃止、感染者数の全数把握から定点観測へ、就業制限や入院勧告の廃止など)で、今後市民生活がどうなるかの検証がなく、市としてどう対応するかに触れていない。
1:医療費の公費支援を一定期間後に廃止する方針を明確にしている。重症リスクのある人に出している薬は10万円弱するといい、現在無料が3万円以上の負担(3割負担)となる。必要な人に薬が出せない状況になるが、対応が必要ではないか。
2:政府は5類になったら患者を診る医療機関が増えるとしているが、発熱外来と従来の患者の動線を分けている状況や、公的支援がないのにコロナ対応を新たに行う医療機関が増えるとは考えられないのではない。本市の発熱外来は、5類化によって従来と同じ対応となるのか。
また1で触れた重症化予防の薬は3~5日以内の服用が求められる。発熱外来が予約いっぱいにならないような強化の取組が求められるのではないか。
3:ワクチンについては、今議会の補正予算での対応の説明があったが、現在行っている食糧支援、パルスオキシメーター、抗原検査キット配送あは5類化後も継続するのか。また、コロナが長期化する中で市民生活が持ち直しているとはとても言えない状況で、初期にあった補償制度の実施が必要ではないか。
4:第8波の一時期、一部の救急患者の受入れが出来なかったと報告があった。市立病院は、地域で唯一重症患者を受入れている基幹病院であるが、公的支援が少なくなる見通しの中で今後もコロナ病床数を維持していくか。
5:8波では、感染しやすい高齢者が居住する老人保健施設でのクラスターが問題となった。完全な隔離が出来ず、コロナ専門医の受診も出来ず、亡くなる例が全国で相次いでいる。収束している時期から対応を進めるべきではないか。