令和5年6月藤枝市議会定例月議会
令和5年6月13日 (一般質問)
さとう まりこ (日本共産党)
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(1) 瀬戸際の保育園に支援を
(2) 私たちの暮らしを支える「非正規」公務員
会計年度任用職員制度の実態と待遇改善について
標題1:瀬戸際の保育園に支援を
国の保育士配置基準は全く足りていない。75年前から基準が変わっていない4才、5才児では、30人に保育士1人と到底手厚い保育などできる体制ではない。
そのため、各園では独自に保育士を配置するなどして子どもたちの安全を懸命に守ってきた。しかし、いま保育の現場は深刻な人手不足に陥っており、各園での努力も限界に達している。
精神・身体ともに負担が重い仕事であるにもかかわらず低い待遇、コロナ禍での過重負担、昨今の不適切保育の問題が大きく取り上げられたことなど様々な要因が重なり、保育士を募集しても確保できない状況が続いている。綱渡りのシフトで何とか体制を維持しているが、現場からは「子どもたちに納得できる保育を提供できていない」と、深い悩みの声が寄せられている。
(1) 子どもと親を支え瀬戸際で頑張っている保育士と保育園のために、保育士確保の財政的支援が必要ではないか。
(2) 障害児の受け入れに当たっては、さらに手厚く保育士の配置が求められるが、現状では財政的にも、人手不足で募集しても応募がない状況においても、保育士が確保できず障害児を受け入れたくても受け入れられない状況がある。障害の有ることで受けられないサービスがあってはならない。
障害児の入園を受け入れられるように、市として支援制度を作ることはできないか。
標題2:私たちの暮らしを支える「非正規」公務員
会計年度任用職員制度の実態と待遇改善について
私たちは、生まれる前から死んだ後まで、公共サービスに支えられている。ところが、公共サービスの担い手である公務員の非正規化が全国で進んでいる。市民を支える大切な存在の公務員が、不安定雇用のワーキングプアとして社会的問題となって久しいが、非正規公務員は増え続け、本市でも、正規より多い800人以上が、会計年度任用という非正規雇用で働いている。
この問題を改善するためとして、2020年に国によって導入された会計年度任用職員制度は、これまで公務員として位置づけが曖昧だった非正規職員を、法的に明確な公務員とし、契約の期間を会計年度内と限定した。この制度は、若干の待遇改善と引き換えに、公務員は原則常勤というルールを壊し、定めのなかった契約更新回数に必要のない上限が設けられるなど状況を悪化させるものだった。
一般的に非正規といっても、労働三権、解雇権濫用法理に守られ、同一労働同一賃金、無期転換ルールなど、働く人を守る仕組みがある。パートタイマーが個人加盟の組合でたった一人で会社と交渉し、全パート5000人の賃上げを勝ち取る事例も生まれている。
ところが、公務員の場合、非正規はフルタイムであっても争議権と団体交渉権がない。会計年度という期間の定めが、解雇権濫用法理の抜け穴となり、無期転換申込権も発生しない。現代の日本においてこれほど権利がない労働者が存在していることに、驚きと怒りを禁じえない。しかも、この状態を作り出すのは民間の手本となるべき官である。官が無権利の非正規労働を増大させワーキングプアを作り出していることは、私たちの社会を不安定で絶望的なものにする。
4年目となった会計年度任用職員制度について、以下質問する。
(1) 頑張っても未来はない、人を使い捨てにする3年限りの壁
会計年度任用職員として働く人にとって最大の問題は、契約の更新が最大2回の3年限りとされていることである。民間では継続勤務5年で無期転換ルールがあるが、労働契約法が適応されない会計年度任用職員には、この権利が無い。
@本市で、契約の更新を最大2回3年限りと勤務条件にした理由はなにか。
A昨年度末、3年で契約を終了した人数は何人か。今年度の、新規契約(昨年から継続でない任用)は何人か。
(2) 会計年度任用職員がおかれている状況について
正規と非正規の待遇の差は大きい。フルタイムで働いても正規職員の1/3から半分以下の年収となる。正規と非正規では職責が違うというが、職責で待遇が変わるのは管理職手当など当たり前のことである。問題は、「非正規」ということで待遇にこれほどの差をつけ、正規と同じ時間、週5日フルに働いていてもまともに暮らせないワーキングプアを、官が作り出していることである。
正規との格差に加えて、会計年度任用職員の中にもフルタイムとパートタイムでのさらなる格差がある。勤務時間が正規より1分でも短いとパートタイム扱いとなる。フルタイムには支給される退職手当がパートには無いなど安く上がるため、パート化圧力が強く働くことになる。
@本市の会計年度任用職員は、全てパートタイムだが、正規より15分だけ短い7時間30分の勤務の職種も少なくない。「パートタイム扱いにすることを目的にしてわずかに時間設定を短くすることは適切ではない」とする令和2年12月21日の総務省通達をどのように考えているか。
A会計年度任用職員制度移行後、期末手当が支給できるようになり財源は地方交付税として配分されている。これに伴い実際の支給額はどれほど増えたか。制度移行時に、勤務時間が短縮された職務があるか。職務と人数を提示されたい。
(3) 非正規の8割が女性、官がジェンダーギャップを広げている
妊娠出産子育てにより職場での競争において不利になる女性にとって、公務員は安定した職場である。男女平等の進む国では、公務員の女性比率が高い。ジェンダー平等先進国であっても、保育や介護などのケアワークは女性比率が高い。公共サービスの供給自体が女性の職場を増やし、さらに女性が社会進出しやすくなる相乗効果がある。
日本では公務員の男性比率が高い。その中で男性には、民営化や委託という年収は維持される形で非公務員化がすすめられた一方、保育・調理・ケアといった女性比率が高い職種ほど非正規化が進んでいる。社会保障が貧弱であるが故に家族の世話を背負い、思うように働くことができない女性は、細切れの不安定な非正規労働者として安く便利に使われている。
公務員の場合、男女の賃金格差は民間より小さいといわれているが、本市職員の男女の賃金格差はどうか。正規と非正規を合算した場合はどうなるか。
(4) 私たちが幸せになるために
会計年度任用職員の立場はあまりにも弱く、正規職員と対等の位置に立つことはできない。制度は、職場を分断し職員に身分の上下を作りだす。
会計年度任用職員には、この仕事を続けたいという未来への希望は無い。経験や知識の蓄積は評価されない。市民のために尽くしても責任が軽いといわれ、雇い止めを恐れて意見も言えない。仮に長く勤められてもパートでは退職手当もない。制度は、仕事から情熱も誇りも希望も奪い取り、人間の尊厳を傷付ける。
憲法27条は、国民に「働く権利」を保証する。官には良質な雇用を国民に提供する義務がある。公共部門の雇用は、それ自体が市民に安定した雇用を提供し生活を保障する福祉であり、市民に経済力を持たせる経済政策でもある。官が無権利状態の人を使い捨てにする制度を改め、人権を守ることが、経済を立て直し、幸せを実感できる社会を作る道である。
国の制度ではあるが、市としてできることがある。まずは、更新の3年限りをやめ、欠員の出た職種のみ公募する方式に改めること、有給となる特別休暇を増やす、専門職の正規採用をすすめるなど藤枝市として可能な改善を一歩進めることを検討されたい。非正規公務員は、行政に一番近い市民でもある。市民の幸せのために、市が動けば実現できることではないか。