令和5年9月藤枝市議会定例月議会
令和5年9月8日 (一般質問)
神戸好伸 (藤新会)
録画を再生
(1) 保育士の処遇改善策について
(2) 給食費の公会計化について
標題1:保育士の処遇改善策について
次代を担う子供たちの子育て環境の充実と、幼児教育・保育の質及び量の確保に不可欠な保育士の人材確保は全国的な課題であり、国は保育士確保プランを進める中、令和4年度2月からの3%9,000円の一律賃上げや、県では保育士養成学校等の学生に入学準備金や修学資金、就職準備金の無利子貸し付け、卒業後に一定期間保育士業務に従事した場合は、返還の全額免除制度を設けています。
藤枝市でも、藤枝市Uターン・地元就職応援プロジェクト等を組み、国や県の補助制度に加え独自の奨学ローンや、地元に就職すれば就職奨励金等を支給する制度を設け人材確保の支援を行うところです。これは、令和3年度11月定例月議会の中で、私の一般質問の項目「保育士・幼稚園教諭の人材確保」の現状からですが、その後も中々解決には至ってはいないとの実情です。
私は、常日頃から保育士の処遇について相談を受けるところでありますが、その中でなんといっても「賃金」が安すぎる事が最大の処遇問題と思っております。
ここで、今一度賃金の現状をお伝えしたいのですが、厚生労働省の平均的一般企業と保育士の「賃金構造基本統計調査」に於いて、令和元年度資料では保育士は女性が多いとはいうものの、全職種における保育士の割合は、男女全体でみると、給与は全職種に対して7割前後となっています。女性の現場であるからこそ賃金が安いではなく、改善を行う必要があるという事がお分かりだと思います。
保育等の運営費は、「基本分単価」の基本部に、特定加算部「各種加算」を積み上げ「支給総額」となっています。この加算数の積み上げは、@認可保育所25個、A認定こども園37個、B新制度移行幼稚園28個、C小規模保育事業A型20個、D小規模保育事業C型18個、E家庭的保育事業18個、F事業所内保育事業19個がそれぞれあり、事務処理を複雑化し、ことあれば都度、大変な作業となっているそうです。
「基本分単価」とは人事院勧告を基に保育士等の給与や運営に必要な費用として国が定めた基本の額であり、こども家庭庁が私立保育所の運営に要する費用として、その内訳を示していますが、月収換算すると、先程の「厚生省基本統計調査」における全体の平均給与の87.5%と平均額を下回っているとの事です。また、「各種加算」の追加を検討するなら、「藤枝市独自加算」と銘打ち、他市に無い加算を全施設に設定付加してやり、全職種の平均となるように設定してやれば良しと考えますが、近隣市町とのバランスも考えなくてならないと思っております。
さて、内閣府子ども・子育て本部では、平成29年度から「技能・経験に応じた処遇改善」として、新たに副主任保育士など中堅の役割を創設し、専門性の向上や処遇改善を図るため、施設や事業所に対してキャリアアップの仕組みづくりを支援する施策を追加しました。このキャリアアップには、研修の受講が必須となっており、研修は1分野15時間以上の受講時間の設定で、段階的措置があるものの7分野中、4分野20科目の取得で副主任保育士・中核リーダー等、経験年数が7年で月額4万円、経験年数3年、職務別分野リーダーで1分野5科目の受講で5千円が、施設や事業所に配分されるようになります。
県では、東部・中部・西部に於いて、@「乳児保育」、A「幼児保育」、B「障害児保育」、C「食育・アレルギー対応」、D「保健衛生・安全対策」、E「保護者支援・子育て支援」、F「マネジメント」と、集合型研修を行う予定ですが、7分野が順次遠方で連日の日程、また「マネジメント」は、3か所開催であるが、必須のため受講エントリーも難しいという現場の声が有ります。限られた日々の業務の中、限られた保育
士の人数では、資格はあっても受講は難しいとの事です。
このような中、先の7月21日の新聞で、保育士、地元でキャリア研修、中東遠で5市町が広域で独自に開催するという記事が有りました。業務が多忙で職場を離れるのも難しい保育士のため、より近い場所で受講機会を増やす目的のため、独自に研修を行うとの事です。
地元で研修があれば、遠方に行かなくて済みます。また午前中は保育に入れる等、受講機会が増えることにメリットを感じていると言います。
保育士の処遇改善、特に賃金値上げは可能なのか以下伺います。
(1) 人事院勧告に基づく「基本分単価」の値上げは可能か伺います。
(2) 「施設類型別加算数」の追加として、「藤枝型独自加算」を設定する事は可能か伺います。
(3) 藤枝市でも今年度から「障害児保育」分野の研修を独自で開催すると聞いております。どのような形でやって頂けるのか伺います。
標題2:給食費の公会計化について
遡って、今年の5月26日の静岡新聞では、紙面半分を使う記事として、「学校から行政へ移行進む」と題され、給食費の徴収と管理について県内の公立学校の会計手法が取り上げられていました。
文部科学省は、2019年、教職員の働き方改革の一環として給食費の公会計化を推進するガイドラインを公表しているとの内容から、県内35市町のうち公会計を取り入れている自治体が多く、今や静岡市、藤枝市、湖西市、熱海市の4市、函南町、東伊豆町、松崎町、南伊豆町の4町を除く市町は、既に「公会計」へ移行しているとの記事でした。
「公会計」とは国および地方公共団体で行われている会計処理のことで、大きく分けると一般会計と特別会計の2つです。これに対し「私会計」とは藤枝市を例にとれば、給食費の徴収・入出金管理・督促を学校が行い学校会計の中で処理する会計処理のことを言います。付け加えて言えば、学校ごとに多少は違う場合もあるとの事ですが、給食費のほかPTA会費、学年費、修学旅行費等も一括請求し、全てて各学校で処理している場合もあるとの事です。
給食費は、学校給食法で定められていて、保護者が負担するのは食材費のみ、人件費や施設管理費等は学校設置者の市町が負担している事は承知のとおりですが、この給食費に滞納者が生じると、特に教頭先生や教員・学校事務職員が督促業務を行う事になります。滞納者への督促は税金などの督促を専門とする部署でも苦労しますが、この専門性を有しない学校において、教員が対応することは、肉体的にも、精神的にも負担が大きいと言えます。特に文書による督促が効果を発揮しなかった場合、電話や戸別訪問による督促に移行しますが、保護者が仕事などで不在であることが多い昼間(通常の勤務時間帯)は保護者と話をするのは難しく、どうしても夜間等に実施せざるを得ない事となり、教員にとっては大きな負担となっているのが実状です。
学校給食費の公会計化等に伴い学校給食費の徴収・管理業務を地方公共団体に集約すると、教員は、当該業務を担う必要が無くなります。教員が当該業務から解放されることにより、授業改善のための時間や児童・生徒に向き合う時間を増やすことが出来ます。
長時間勤務が看過できない深刻な状況の中、解決のひとつとなると思いますが、地方公共団体における給食費の公会計化導入促進に対し、市ではどのようにお考えか、以下伺います。
(1) 藤枝市における現状の給食費の徴収形態と問題点を伺います。
(2) 新聞には、保護者の声として「給食費の制度やお金の流れがどうなっているのかよく分からない」とありましたが、現状の保護者への周知はどうされているのか伺います。
(3) 令和5年度より公会計(一般会計)に繰り入れされた富士市では、給食費に加えPTA会費、学年費、修学旅行費積み立て等、保護者の口座から一括して自動振替とし、市は徴収した給食費以外を各学校に振り込む一連のシステムを導入し運用が始まったとの事です。
これにより、当該業務が無くなった各学校現場からは、かなりの負担や稼働が削減されたとは、正に働き方改革の促進につながったとのことでした。
公会計制度を実施している地方自治体では、富士市のように自治体が一括して徴収し、給食費以外を学校に振り込む場合や、学校が一括して徴収し給食費だけを当該市に振り込む場合、または給食費だけを公会計制度とし、その他は今までどおり学校が独自で徴収しているところもあります。
それぞれメリットやデメリットはあるかと思いますが、今後の計画として本市は、公会計制度化をお考えか伺います。