令和6年6月藤枝市議会定例月議会
令和6年7月9日 (一般質問)
さとうまりこ (日本共産党)
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(1) 子どもの豊かな育ち支える学童保育を
標題1:子どもの豊かな育ち支える学童保育を
(放課後児童クラブが正式名称であるが、学童保育の方が一般的には通用しているため学童保育という言葉を使って質問をする。)
学童保育は、核家族化、両親共働き、高齢者の就労などが進む社会で、不可欠なインフラであり、重要性はますます高まっている。本市では、全ての小学校に学童保育が整備されたが、未だ待機児童は解消しておらず、さらに潜在的な需要への対応や、保育内容の質を高めていくことが求められている。子どもの豊かな育ちを支える学童を目指して質問をする。
(1) 本市の学童の現状について
@「質」の問題
1)学童保育は、「安心して働き続けたい、子どもたちに豊かな放課後を過ごしてほしい」という親たちの取り組みから始まり、公的支援を求める段階を経て、行政の事業へと変遷してきた。
自主グループ時代の元指導員は、「大人も楽しかったよ。子どもたちが帰りたくないと親を困らせていた。ピクニックやハイキング、キャンプにもいった。食事やおやつをみんなで作って食べてねえ〜」と話す。昔の学童っ子も、目を輝かせながら「いろんな学年の子がいて、ずっとみんなでひたすら遊んで、ものすごく楽しかった。コマ回し、けん玉、一輪車、鉄棒も上手になった。鬼ごっこ、かくれんぼ、ボール遊び、川遊び、虫取りで外でいっぱい遊んだ。学童で大人や年の違う子と友達になった。たくさんの経験と成長ができた。自分の子どももそんな体験をしてほしい」と思いを語る。
さて、今年度、我が子が一年生となり、学童にお世話になっている。そんな学童の話を聞いていたから、馴染めるかなという不安と、楽しんでほしいという期待で送り出したが、最近、通所を渋るようになった。「学童でいろんな子と遊べたよ」という一方で、「外遊びが15分しかない」「外に行きたいのに部屋でDVDを1時間も見ていなければならなかった」「コマ回しなどやりたい遊びができない」という。迎えの際様子をみると、約40坪ほど一軒家の広さ程度の施設に、子どもが40人前後と大人が数人。とても狭い。算盤塾のように机を並べた状態である。確かにこれでは、自由に動き回っては危険だ。
他にも、市内のあちこちから「夏休みは外遊びが1日もなかった」「危ないからと制限ばかりでつまらない」「先生が怖い」「好きな遊びができない」など、学童に行きたがらないという子どもの話を耳にする。低学年のうちは一人でいるのが無理だから学童に行くが、留守番できるようになるとやめたという話も多い。こういった状況を市長やこども課はどのようにお考えか。
2)子どもの楽しい放課後のために取り組んでほしいことを以下提案する。
まず何より、外遊びの少なさは深刻だ。体を自由に動かせる時間を平日でも1時間以上確保すべきである。ゆっくりと休養したい子どもと別々に活動できるように、休憩室の防音を高めることや、グループに分かれて別の場所に移動できる指導員の人員配置をする必要がある。狭い建物から子どもたちを解放するためには、体育館や図書館、音楽室、プールなど学校施設を積極的に使っていくべきである。
元気な小学生なら、一日中、外で遊ぶのが普通のことだ。熱中症予防のためとはいえ、夏休みに一日の外遊びゼロ(驚くことに一月まるまるゼロの学童もある)は、何としても改善すべきでないか。水かけ遊びなど工夫している学童もあるが、着替え場所に苦労している、汗を流すシャワー、男女別の更衣室も欲しい。学校のプールや体育館は、空調がなく暑くて使えない。体育館のエアコンとシャワーはこれからの時代絶対必要なので設置を急ぐべきである。今年の夏は、緊急にバスなど交通手段を準備し市営や民間のプール、博物館や科学館、美術館などの社会教育施設、児童施設、市営県営の体育館での体を使った遊びなどで、最低でも週一回は子どもたちを外へ連れ出せないか。29億円ある未来を創るふるさと応援基金を活用すべきでないか。
おやつについては、食育の中で、嗜好品ではなく食事を補うものと教えている。市販のお菓子を毎日出すのではなく、おにぎりや果物・野菜などを取り入れ、子どもも一緒に調理できるよう、国の基準にはないが、調理器具や調理場の設置が求められる。
子どもの個性や一日の様子を、指導員も把握できるようにする必要がある。子どもを的確にフォローするには学校や家庭の状況を含めて丸ごと知ることが必要だ。
子どもの様子を振り返り、改善点や個別にフォローすべき点などは職員同志が共有する時間は、保育の時間外に必要だ。指導員の個人的資質に任せずチームで子どもに関わる体制ができているか。
設備・予算・制度の限界で、常に我慢を強いられるのは、力の弱い子どもである。学校の児童対象のアンケートのように、子どもの声を定期的な聞き取ること、保護者会や保護者との集団的な協議も必要ではないか。
動画の視聴状況も改善せねばならない。人間が直接かかわることが、人間関係のスキルを学ぶことである。動画無しの保育は、人数を確保し体制を作れば可能である。安全講習など特別な場合を除いては、極力画面から子どもを遠ざけるべきではないか。
子どもの心身共に健全な育ちの実現のために、以上のような改善を急ぐべきではないか。
A「量」の問題
本市では17の小学校に29の学童保育があるが、希望者に対してまだ受け入れ枠が足りていないため、年齢や家庭の状況で選考されることになる。審査を経て待機となった児童は今年度4月1日現在では61人であった。
これに加えて、申し込み自体できない潜在待機児童がいる。申し込みには、市内在住74歳以下の祖父母がいる場合、就労や傷病の証明が必要である。預かり時間は、保育園では19時までだが、学童は18時までで足りず、家族構成や時間がネックとなる
また、夏・冬・春休みの時だけ、入会の希望があるが、学区の学童はいっぱいで入れず。遠方の学童をでは送迎が必要となり諦めるという場合がある。子どもは減っていても、働く保護者が増えているから、学童保育を必要とする子どもは今後も減らない。全市的には枠に余裕があっても、子どもが自分で行ける所でなければだめなのだ。
待機児童、潜在待機児童また、子どもの集団形成のために1か所の人数に余裕を持たせるためにも、引き続き定員の拡大が必要ではないか。
(2) 学童を支える指導員について
本市の学童保育の運営は社会福祉協議会に委託されている。29の各学童にフルタイムの主任が一人配置され、あとは13時から18時まで、時給1023円のパートのシフト制である。総勢約180人の指導員の年齢構成は60代以上49%、50代が30%で、女性が90%を占める。主任も含めて全員が非正規で、10年以上勤めても退職金もないという。
小学生ともなれば体も大きく力も強くなる。子どもの安全を守るため、指導員は全力で頑張っている。現場は、子どものために良い保育をしたいという指導員の善意に支えられている。子どもの命を預かり、成長を支える場所であるのにもかかわらず、働く人の身分が保証されていなくてよいのか。週3日や週4日、1日5時間のシフト制で、指導員同士の連携や保育の方針の徹底にも支障が出る。命を預かる場所として、各学童ごと常勤を数名配置し、正規雇用へと改善していくべきではないか。
思いっきり遊ぶということは生きる力の源であり、自由な楽しい遊びは子どもの権利である。安全を守りつつ、とことん遊び、子どもの成長を支える指導員には、子どもへの愛情、良い保育を実現するための情熱、経験と知識が求められそれに、ふさわしい待遇とすべきだ。
指導員も、子どもと一緒に成長する。保護者と連携し、地域と信頼関係を築いていくには長く働ける職場であることが大切だ。若い人が希望をもって就職したいと思えるような待遇にしていくべきでないか。
(3) 学童保育の可能性を引き出し、子どもの豊かな育ちを支えるために
放課後は、自由に自分で考えて行動し、年の違う子や地域の大人と人間関係を学ぶ大切な育ちの時間である。昔は、おもちゃなどなくても創意工夫し、子ども同士でルールを作り、全身を使って遊ぶことが当たり前であったが、今の子どもの時間は管理され制限され、自由に疲れるまで遊ぶ機会は激減している。何か準備してもらわなければ、遊び方がわからない子どもが増えているという。
家庭の経済力による体験の格差が広がっている。しかしながら、早期教育や習い事など大人に管理される時間が多いことより、自由遊びをたくさんした方が非認知能力・読み書き能力・語彙力などが大きく伸びその後の学力につながることが研究で明らかになっている。
学童保育は、子どもの集団や地域のかかわりを再生し、自分で考えて作り出す力を持つ子を育てることができる可能性に満ちた場所だ。子どもが学童を大好きになれば、親も安心して働くことができる。
学童保育の運営は、国の基準は参酌するものとされ、良くも悪くも自治体任せだ。学童を見れば、その自治体が子育てをどう考えているのかがわかる。少子化が急加速する今、子どものための施策は緊急なおかつ最重要である。子育ての専門機関ではない社会福祉協議会に委託でよいのか。藤枝の子どもたちが放課後に豊かな育ちを得られるよう、学童保育は市の直営事業として取り組んで行くべきではないのか。